秋葉山表参道は火防の神と天狗の三尺坊大権現を感じる神秘的なコース

ゆかみたけし

2016年12月29日 22:29

春野町にある「秋葉山」(885m)は、自宅から車で1時間で行けることもあり、山頂の「秋葉山本宮秋葉神社」までのハイキングコース(東海自然歩道)は私も何度も歩いていて、ホームグランドと思っています。

秋葉山の麓にある「秋葉神社下社」から登り始めるコースは「表参道」と言われ、多くの方が利用しています。






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この駐車場の脇には立派な公衆トイレがあります。
表参道には、山の中腹にある「秋葉寺」裏と、山頂の「秋葉神社上社」にも綺麗な公衆トイレがあります。
ドリンク自販機は下社前と上社にあります。

駐車場を出て左方面をしばらく車道を歩くと分岐点があり、大きな案内板が出ているので右方向に進みます。



表参道、徒歩90分と表記されていますが、これは「秋葉寺」までのものです。
すぐ横にある東海自然歩道の案内板には、山頂の上社まで4.2km、120分とされています。

少し整理しておきましょう。
秋葉山には神社とお寺があり、神社は山頂に「上社」、麓に「下社」があります。
同じ山に神社とお寺があるのは「神仏習合」によるもので珍しくはありません。

秋葉山中腹にある「秋葉寺」は「あきはてら」ではなく「しゅうようじ」と読みます。
秋葉神社よりも歴史が古く、江戸時代中期は秋葉寺が山頂にあり「秋葉三尺坊大権現(あきはさんじゃくぼうだいごんげん)」の出現霊場であり、数多の参拝者が訪れて、秋葉信仰が全国に広がったとされています。
明治13年に多くの信徒の願いが叶い再建され現在に至り、通り名を「三尺坊」と言います。



三尺坊の姿は天狗であり、権現というのは、日本の神の神号の一つです。
東京の秋葉原という地名も、ここから生まれました。

訪れて一見するとわかるのですが、山頂の秋葉山本宮秋葉神社が火防の神様として知られ、立派な建物で華やかなのに対して、秋葉寺は建物が傷んだままで衰退した感が否めません。
これは神仏分離によるもので、秋葉寺は一時期廃寺となり、三尺坊真体も袋井の可睡斎に移されました。
山門も本堂も古めかしいのですが、私は秋葉寺の静かな雰囲気が非常に好きです。

余談ですが、舘山寺温泉で有名な「舘山寺」も「秋葉三尺坊大権現」を鎮守しています。

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難しいことはさておき、歴史を感じさせる秋葉山のハイキングコースは、歩きがいもあり十分に楽しめるものです。





「九里橋」を渡ると、石畳の急勾配の坂道がいきなり始まります。
坂を利用して、アキレス腱を伸ばしながらゆっくり歩き出します。
ここで無理をせずにスロースタートでペースを作ることが大切です。
急坂を登りきった所に東屋の休憩所があり、ここを左方面に進みます。

民家前の階段を登りきると「三の鳥居跡」があります。
この地点は「海抜160米(メートル)」である表示もされ、このあとすぐに「海抜200米」と順に標高がわかるように現れるので、登る目安となります。
現在地が「5町目」であり、秋葉寺の「50町」まで、1町ごとに鳥居・杭にて表示されています。





階段上の山道は勾配もきつく、歩きごたえがあります。
常夜灯も多く立っていて、十三丁目の物は、金原明善の父君が寄進したものと説明板があります。





こちらの案内板には、十三町目が「もみじ茶屋跡」となっています。





「秋葉街道を歩く会」が設置した案内板は、文字が消えかけて解読が難しいものが多く残念ですが、昔は茶屋など多くの建物があり賑わっていたことがわかります。





二十八町目は「富士見茶屋跡」で、こちらは立派な説明看板があります。
この辺から傾斜がやや緩くなるような感じがします。



三十町目は「四の鳥居跡」で、今も残る礎石の上には「景勝関」と書かれた額がかかる銅鳥居が建っていたそうです。



更に登っていくと「子安地蔵尊」(安産の神)が祀られています。
秋葉三尺坊十二請願の一つで、女人分娩の難を除くため安産祈願をして、大願成就の暁に底を抜いた杓(しゃく)が奉納されています。

その少し先に休憩所があり、その右手にある大きな鉄塔の下からの景観が秋葉山では最も優れています。
ここが表参道の中間地点です。
この日は富士山がはっきり見えて、手を伸ばすと届きそうな感じで、最高の気分になりました。
肉眼ではもっと近くに感じる大パノラマでした。






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三十七町目には「信玄岩」があります。
武田信玄がこの岩の上に立って、光明山に陣を敷く徳川家康に向かって矢を射たという伝説があるそうです。
休憩所も設けられていて、信玄岩を上から見ることもできます。





秋葉山表参道は、スタートから登り一辺倒なのですが、一箇所だけ少し下る場所があります。
そのあとに、今度は長い直線の上り坂「土佐坂(阿波坂)」が待っていて、ここが頑張りどころです。
土佐の殿様が参拝の折、急坂の為に現在の参道に替えたのだそうですが、それでも厳しい急坂だと思います。
ここを登りきると、いよいよ「秋葉寺山門」が見えてきます。
海抜704メートルまで登ってきました。(画像略)







五十町目の「秋葉寺」については先に解説済です。
表参道は敷地右側に並走していて、本堂を過ぎると休憩所とトイレ、案内掲示板が設置されています。
山頂の「秋葉神社」まではあとひと頑張りです。

味のある町指定文化財「秋葉山」の説明看板がありました。
「護国嶺」の額が掲げられていた「五の鳥居跡」も基礎部分が残っているだけです。





海抜800米の表示板を過ぎれば、いよいよ最後の頑張りどころの階段状の山道。
それを乗り切ると、昭和18年の大火を免れ、町指定有形文化財となっている「秋葉神社神門」です。
歴史ある建造物は、とても良い雰囲気を醸し出しています。







神門を通り過ぎるといよいよ「秋葉神社上社」に到着です。
本殿に登る立派な階段の裏側に出ます。



逆方面から見るとこんな感じです。
階段上には黄金の鳥居が見え、その奥に本殿があります。



本殿から南方面への展望が素晴らしく、天竜川の形がはっきりわかり、肉眼ではアクトタワーも確認できました。


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ちなみに山頂の秋葉神社からは富士山は方角が違うので見ることはできません。
帰り道の鉄塔のある休憩所から、再度壮大な姿を拝んでください。

今年は春夏秋冬オールシーズンで表参道の登山を経験しましたが、今回が一番良く整備されていて、気持ち良く歩くことができました。
何度歩いても、その度に違う感覚を味わえるので飽きることもありません。

人によって体力も経験も違うので、所要時間や感想も大きく違いがあると思います。
学校の遠足でも選ばれ、初心者向け、景観が少なく退屈と言う方もいますが、決してなめてかかれないコース(いろいろな意味で)だと私は思います。

山頂の秋葉神社まで、天竜スーパー林道にて自動車でも行くことができますが、富士山の見える所や「秋葉寺」は歩いてしか行くことはできません。
歩きやすく、景色の良いこの時期に是非お出かけください。

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